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2019年1月講義『オリエンテーション――小林秀雄が求めたもの』

更新日:2021年1月11日

第1回 2019年1月17日

オリエンテーション――小林秀雄が求めたもの


 日本の近代批評の創始者・確立者として大きな足跡を残した小林秀雄氏は、文学、音楽、絵画、歴史、哲学、時事……と、多彩な文筆活動を60年にわたって展開しました。その間、氏が一貫して考え続け、書き続けたことは、「人生、いかに生きるべきか」でした。


 一般に、「人生、いかに生きるべきか」と聞くと、先生が生徒に言って聞かせる道徳のようなものを思い浮かべますが、小林氏の場合はそうではありません。ひとことで言えば、「この世に二人といない小林秀雄として生まれてきた小林秀雄は、小林秀雄にしか生きられない人生をどう生きればよいか」でした。そして氏はこれを、ランボー、モーツァルト、ゴッホ、本居宣長……といった、見事な生き方を作品・文章に刻んでくれた芸術や学問の天才たちに問いかけ、彼らと徹底的に対話することで自問自答を繰り返しました。


 私たちが小林秀雄を読んで奮い立つ理由はここにあります。私たちも小林氏が考えたように考えて自問自答を繰り返す、そうしているうち、心に、身体に力がわいてくる……。小林氏は「読書について」で言っています、はっきりと眼覚めて物事を考えるのが人間の最上の娯楽である……。この集いでは月々氏の作品を一篇ずつ取り上げ、その作品に即して「人生、いかに生きるべきか」を氏とともに考えていきます。


 講師 池田雅延

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