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  • manebiyalecoda

2022年5月19日(木) 「『悪の華』一面」 /片岡久

 この文章を読んで驚いたのは、小林先生はこの文章を書かれた二十五歳の時点で、すでに生涯をかけたテーマを認識されており、その解読に取り組まれていたことです。


 象徴は生きた記号であり、生きているとは意味と存在が未分離であることだとされています。それは芸術という形式が形態と意味を切り離せないことに同じであると記されています。その文章は、晩年の「本居宣長」で、「もののあはれ」は感情ではなく認識であるとして、その認識を支える言霊を、ふりと意味を分けない、記号のあり方と捉えられたことに、つながっているのだと理解しました。

 万物照応に共感し続ける詩人は、生きた虚無に彷徨い、万物の体系を静止させて分析する思索家は、論理整合とともに死した実体を得る、この基本的な二つの認識のモードが、批評家としての小林秀雄氏のやむことのない活動の原点にあるのだと思いました。

 とても素晴らしい文章を読ませていただき、ありがとうございました。



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