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2022年1月講義「ヴァイオリニスト」「蓄音機」

  • manebiyalecoda
  • 2022年2月5日
  • 読了時間: 2分

 「小林秀雄と人生を読む夕べ」の今期(2021年10月~22年03月)は、小林先生の作品名から採って「美を求める心」をテーマとし、これまでに「骨董」「真贋」と焼物の世界を、次いでは「鉄斎」「雪舟」と日本画の世界を巡ってきましたが、今月は「ヴァイオリニスト」「蓄音機」と音楽の世界を巡ります。

 小林先生は、絵や骨董と並んで音楽も大好きでした。なかでも音楽との出会いは最も早く、子供の頃に父親が外国から買って帰った蓄音機がきっかけでした。そして終生、一も二もなく好きだった楽器はヴァイオリンで、そういう小林先生の音楽大好き人生のサワリが「蓄音機」と「ヴァイオリニスト」で語られます。

 ただし、先生は、大の音楽好きと言っても今日のいわゆるクラシックファンとはまったく違っていました。折にふれて先生は、「音楽は耳で聴くものだ、近ごろの音楽好きは耳で聴いていない、頭で聞いている」と言っていましたが、さらに先生は「音楽は目でも聴く」と言い、「ヴァイオリニスト」ではかつて日本に来たエルマンやチボーの肉体の動きをまざまざと思い出した後に、18~19世紀のイタリアで屈指の奏者だったパガニニは日頃の一挙手一投足でも聴衆を熱狂させたと言って彼の逸話を次々語り、ヴァイオリンという楽器は古風だが今も独奏楽器として重要な役をつとめている、これは、宗教も哲学も無視してヴァイオリンに独特な歌を歌わせる芸しか信じていなかった放蕩者パガニニの亡霊なくしては考えられないことだとパガニニの音に思いを馳せ、憑かれたようにその亡霊を追います。

 「ヴァイオリニスト」は「小林秀雄全作品」の第19集に、「蓄音機」は同じく第22集に入っています。

  講師 池田 雅延

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