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2021年8月講義「正宗白鳥」

  • manebiyalecoda
  • 2021年9月4日
  • 読了時間: 2分

 今回は「小林秀雄と作家たち」シリーズの第5回、「正宗白鳥」です。小林氏が昭和7年(1932)1月、30歳で書いた「正宗白鳥」(新潮社刊「小林秀雄全作品」第3集所収)と、畢生の大業「本居宣長」を書き上げた後の昭和56年1月、79歳で雑誌連載を始め、同年11月、未完のまま氏の絶筆となった「正宗白鳥の作について」(同別巻2所収)を取り上げます。

 正宗白鳥は、志賀直哉、菊池寛と並んで小林氏が終生敬愛し続けた作家ですが、小林氏が白鳥のどこにそんなにも魅せられたかを一口で言えば、白鳥の「一種傍若無人のリアリズム、奇妙ななげやり」です。そこをまたこうも言っています、「正宗氏の作品で、私が動かされるのは、氏独特の文体である、調子である。氏の文体は、勿論豊かでもなければ、軽快でもない。併し又、素朴でもなければ、枯淡でもない。氏の字句の簡潔は、磨かれた宝玉の簡潔ではなく寧ろ、捨てられた石塊の簡潔だ。私は、氏の文体の強い息吹きに統一された、味も素気もない無飾の調子に敬服するのである。この文体はこの作家の資質の鏡である」……。

 またいっぽう、昭和11年4月、34歳の年にはトルストイの家出と死をめぐって23歳年上の白鳥に論戦を挑み、後に「思想と実生活論争」と呼ばれて語り継がれる応酬を烈しく展開しました。かと思うと戦後すぐの昭和23年秋には「大作家論」と題した対談を行い、酒は一滴も飲めない白鳥相手に大演説をぶって、「全体酔漢の心理は私には神秘不可思議である」と白鳥に言わせたという伝説を残しました。この大論争と対談もまた、小林氏がどんなに深く白鳥の懐に飛び込んでいたかを示すものです。


 講師 池田雅延

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