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2021年7月講義「菊池寛」

  • manebiyalecoda
  • 2021年8月1日
  • 読了時間: 2分

 今回は「小林秀雄と作家たち」シリーズの第4回、「菊池寛」です。小林氏が昭和12年(1937)1月、34歳で書いた「菊池寛論」(新潮社刊「小林秀雄全作品」第9集所収)を取り上げます。  菊池寛は、明治21年(1888)に生れた作家であり、ジャーナリストです。作家としては「忠直卿行状記」や「恩讐の彼方に」などの純文学、「真珠夫人」などの通俗小説、また「父帰る」などの戯曲で知られ、ジャーナリストとしては雑誌『文藝春秋』の創刊、芥川龍之介賞・直木三十五賞の創設、文芸家協会の設立等々数多くの事業を興し、人並みはずれた先見の明と実行力とで大きく文壇に寄与しました。  その菊池寛は、小林氏にとって特別の存在でした。晩年、自分が心底敬愛した日本の作家は、志賀直哉、正宗白鳥、菊池寛の三人だけだと言い、わけても菊池寛は、文章を売って生計を立てるという文士の生き方の大先達、大天才として仰ぎ、『文藝春秋』への執筆はもちろん、菊池寛の実行力に魅せられて講演旅行、文士劇……と、行を共にし続けました。  菊池寛のどこが、なにが、小林氏をこれほどまでに引きつけたのでしょうか。まずは、菊池寛その人が逸話の問屋のような人だったからですが、菊池寛の小説もまさに逸話の魅力でした。菊池寛は、アメリカの文学者アッシュマンが小説を分類し、「human interest stories」(人間らしさの面白さを狙う小説)というグループを設けていると随筆に書いているが、菊池寛の短篇小説自体、すべてが「human interest stories」である、小説は素材で決まる、「ここにも人間がいる」と読者の誰もが共感してくれるような逸話をさっと拾う、それだけだと菊池寛は思い決めていたたにちがいないと小林氏は言い、そこにこそ氏が菊池寛に心酔した理由があると言っています。  講師 池田 雅延


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