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2021年6月講義「志賀直哉」

  • manebiyalecoda
  • 2021年7月3日
  • 読了時間: 2分

 今回は<小林秀雄と作家たち>シリーズの第3回として「志賀直哉」を取上げます。この作品は、小林氏が「様々なる意匠」によって文壇デビューを果した昭和4年(1929)9月の3ヶ月後、今日風にいえば受賞第一作として雑誌『思想』に発表されました。小林氏27歳の年の12月です。


 志賀直哉は、小林氏にとって終生の大先達、大恩人でしたが、「様々なる意匠」に先立って書いた処女小説「蛸の自殺」を送って賞讃されるなど、早くから大きな感化を受けていました。しかも2年前の昭和3年5月、長谷川泰子との同棲生活に追いつめられて関西に出奔、翌4年の春まで約1年に及んだ関西放浪の間、小林氏は物心両面にわたって志賀直哉の庇護を受けました。その志賀直哉を、小林氏は批評家人生の初仕事として論じたのです。 


 今回の対象作品「志賀直哉」は、志賀直哉の親友のひとりであった小説家、広津和郎が大正8年に発表した「志賀直哉論」と並んで直哉論の双璧とされ、今日に至るもなお直哉の読者、研究者に並々ならぬ影響を及ぼし続けています。それというのも、小林氏が指摘した志賀直哉の個性、特性が、的確という以上の示唆に富み、読者、研究者は一読するなり目を洗われる思いに誘われるからです。 


 小林氏の指摘は、大きく分けて3つあります。今回の集いではその3つの指摘を順次ご紹介し、それが単に優れた志賀直哉論というにとどまらず、「様々なる意匠」で叫んだ「批評の対象が己れであると他人であるとは二つの事でない。批評とは竟に己れの夢を懐疑的に語る事ではないのか!」が見事に実践され、以後半世紀以上に及んだ氏の批評人生の主調低音が鮮やかに鳴っている様をごらんいただきます。

 講師 池田 雅延

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