2021年12月講義「鉄斎」「雪舟」
- manebiyalecoda
- 2022年2月5日
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「小林秀雄と人生を読む夕べ」、12月は「鉄斎Ⅱ」と「雪舟」を読みます。 「鉄斎」は、富岡鉄斎です。明治・大正期の文人画家で、儒学・国学・仏典・詩文と和漢の学問を広く修めるとともに、日本古来の大和絵に中国明・清の画風を取り入れ、独自の画境をひらきました。その絵、その生き方、いずれも自由奔放、大胆不羈で、この鉄斎に小林先生は四十代から惚れこみ、4篇の鉄斎論を書きました。が、鉄斎という画家を知るうえでも、小林先生が鉄斎のどこをどう面白がっていたかを聞きとるうえでも、まずは「鉄斎Ⅱ」が好適と見て今回は「鉄斎Ⅱ」を精しく読みます。ある年、先生は、兵庫県宝塚の所蔵家の好意で4日間、早朝から坐り通して200点近くを見て過ごしました。なかでも大作「富士山図屏風」は3時間以上も眺めて隅から隅まで味わい、これを描いた鉄斎の気持ちまで汲んで文章に写し取りました。読んでいくうち、まるで鉄斎と小林先生に連れられて富士山へ登っているような気分にさせられます。もちろん「鉄斎Ⅰ・Ⅲ・Ⅳ」も面白さは尽きません。 そして、雪舟は、「破墨山水図」「天橋立図」など、数々の名品で知られる室町時代の水墨画家です。小林先生はある年、長さ15メートル以上にも及ぶという雪舟の大作「山水長巻」を、山口県の所蔵家の好意で心ゆくまで眺める機会に恵まれました。先生は、こんなに心を動かされた山水図はいままで見たことがないと言い、山水鑑賞が人生の目的になってしまったような男が山路を歩きだす、私もこの男と一緒に絵の中を歩きだす、と筆を起し、男の目に映る水や岩を次々と文章に写し取っていきます。こうして出来上がった「雪舟」は、まさに「小林秀雄の山水長巻」であり、同時に雪舟という画家の凛々しい肖像画です。読み進むにつれて私たちも雪舟の絵の中を歩いている感覚に襲われ、絵というものはこういうふうに見るものなのかという感動がどんどん高まります。 「鉄斎Ⅰ」「鉄斎Ⅱ」「鉄斎Ⅲ」「鉄斎Ⅳ」はそれぞれ新潮社刊「小林秀雄全作品」の第15集、第17集、第21集、第21集に、また「雪舟」は同じく第18集に入っています。
講師 池田雅延
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