2021年12月16日(木) 「鉄斎」「雪舟」 /大江公樹
- manebiyalecoda
- 2022年1月18日
- 読了時間: 2分
今回読んだ中では「鉄斎Ⅱ」に興味を覚えました。特に惹きつけられたのが、最後にある「鉄斎は行儀の大変やかましい人で、家人が膝でも崩すと、恐ろしい眼で睨んだ。当人は、客の前でも平気で膝小僧を出していたそうである。」といふ部分です。かういふ鉄斎のあり方は、現代の我々からすれば一貫性を欠いてゐて非常識だと映ります。しかし小林先生の描く鉄斎は仮にそれを指摘されても、きつとどこ吹く風で平然と膝小僧を出し続けるでせう。「登って案出した形」をした富士や、「志などから嘗て何かが生れた例しはない」といふ鉄斎を描写した小林先生の言葉も、我々の常識、つまりは西洋近代から得た写実や合目的性といふ思考の枠組みを、次々に壊してゆきます。西洋近代の常識から大きく足を踏み出して存在する鉄斎の姿に、感銘を受けました。
講座では池田先生が、富士の大屏風について説明した小林先生の文章について、「これは小林先生が言葉で以て絵を写し取つた模写」であり、安易に絵を見ることは無く、まづは小林先生の言葉を味はふべきとの旨を仰りました。富士の大屏風がどんなものか知らない無教養を幸ひに、講座後は小林先生の言葉から富士の大屏風を想像して、頭の中で自由に楽しんでをります。
今回も小林先生の文章の魅力を伝へる講義をして頂き、有難うございました。
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