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2021年10月講義「慶州」「ガリア戦記」

  • manebiyalecoda
  • 2021年11月8日
  • 読了時間: 2分

 「慶州」は小林先生37歳の年、昭和14年(1939)の6月に発表されました。日中戦争下の昭和13年10月、友人の兄の招待を受けて友人とともに朝鮮から満州、華北を旅行し、その途次、朝鮮の慶州郊外にある仏教遺跡、仏国寺と石窟庵を訪れます。  仏国寺は新羅時代の石塔などが残る古刹ですが、石窟庵に入って居並ぶ仏像を目にするなり、これらの仏像、どれもが一流品だ! と一流品ならではの強い感じを受け、外に出るやあの部屋に満ちていた奇妙な美しさは何なのかとただちに考えこみます。これが、以後、文学から一転して深入りしていく美の世界への第一歩となりました。

 「ガリア戦記」は昭和17年5月、40歳の年の作品です。先生は慶州へ行った昭和13年前後から陶磁器をはじめとする骨董に熱中し、色と形とだけの世界で言葉を封じられ、視覚と触覚に精神を集中する日々を続けていました。そこへ17年2月、「ガリア戦記」の翻訳が出ました。この本は古代ローマの武将、シーザーの遠征報告書ですが、視覚と触覚だけに精神を集中していた先生には、この史書が現代の文学とは異なり、強い彫りの線や石の手触りなどをさえ感じさせる古代の美術品のように迫ってきたというのです。先生は、美に沈潜してかえって深く文学の世界を見すえていきました。  「慶州」は「小林秀雄全作品」の第12集に、「ガリア戦記」は同じく第14集に入っています。

 講師 池田雅延


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