2020年11月『表現について』
- manebiyalecoda
- 2021年1月11日
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「小林秀雄と人生を読む夕べ」の<講演文学シリーズその1>第4回は、「表現について」(新潮社刊「小林秀雄全作品」第18集所収)を読みます。
文学、美術、音楽……芸術はすべて人間の表現行為の結晶です。ではその表現とはどういうことでしょうか。「表現」という日本語のもとになった英語のexpressionは、たとえばみかんをつぶしてみかん水をつくるように、物を圧しつぶして中味を出すという意味の言葉です。ということは、表現とは、動揺してやまない自分の主観を意識し、感情も理性もぎりぎりまで酷使してそれを絞り出す作業です。したがって、芸術家の表現とは、自分はどう生きているかを自覚しようとする行為なのであり、ひいてはどう生きるべきかの実験なのです。
だから、よりダイナミックに音楽を聴いたり文学を読んだり絵を見たりするコツは、作者の表現しようとする意志、そこへかぎりなく近づいていこうと努力することだと小林氏は言います。氏の「芸術とは何か」のエッセンスです。45歳の夏、鎌倉で行われた講演がもとになっています。
講師 池田雅延
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