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2019年8月講義『本居宣長』

  • manebiyalecoda
  • 2019年9月3日
  • 読了時間: 2分

更新日:2021年1月11日

 小林秀雄氏の全作品を長大な山脈に見立てて「小林秀雄山脈」と呼び、そのなかでもひときわ高く聳える6つの峰、すなわち「ランボオⅠⅡⅢ」「ドストエフスキイの生活」「モオツァルト」「ゴッホの手紙」「近代絵画」「本居宣長」にまず登ろうという私たちの試みはいよいよ6番目の峰、というより最高峰も最高峰の「本居宣長」に登るところまできました。「本居宣長」は、小林氏が63歳の夏から74歳の冬まで雑誌『新潮』に連載、さらにその連載稿に徹底的に推敲の筆を加えること約1年、計12年余の歳月をつぎこんで完成した文字どおり畢生の大作です。

 本居宣長は、江戸時代の中期に活躍した大学者ですが、彼の最も大きな業績は「源氏物語」と「古事記」を現代の私たちもが正しく読めるようにしてくれたことです。平安時代に書かれて以来、作者紫式部の真意を無視して勝手気儘な読み方が罷り通っていた「源氏物語」を、700年以上もの時を超えて初めて正当に読み解き、さらには、まだ平仮名も片仮名もなかった奈良時代に漢字だけで書かれたため、あっというまに日本人の誰にも読めなくなってしまっていた「古事記」を、1000年もの眠りから覚まして誰もが読めるように解読したのです。

 小林氏の「本居宣長」は、こうして長い間、日本人の誰もが誤読するか手を拱いているかしかできなかった「源氏物語」と「古事記」を、なぜ宣長は一代で、しかもたった独りで読み解くことができたのか、そこを精しく追った本です。宣長の学問の根底には、私たち日本人はどう生きていけばよいかという大きな問いがありました。その問いの答を宣長は「源氏物語」と「古事記」に求めた、そこが両作品解読の鍵だったと小林氏は言います。それはまたどういうことでしょうか。


 講師 池田雅延


*「本居宣長」は、新潮社刊『小林秀雄全作品』の第27集、第28集に入っています。

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