2019年4月講義『ドストエフスキイの生活』
- manebiyalecoda
- 2019年4月20日
- 読了時間: 2分
更新日:2021年1月11日
ドストエフスキイは、19世紀のロシアが生んだ世界的大文豪ですが、日本での人気もトルストイと並んで他を圧していると言っていいでしょう。そしてその日本での人気の基礎は、小林秀雄氏によって築かれたと言っても過言ではありません。それほどに氏のドストエフスキイ論は大きな衝撃と感動を日本にもたらしました。
ドストエフスキイは28歳の年、社会主義研究サークルの仲間とともに逮捕され、銃殺刑を言い渡されます。しかしその執行直前に赦されてシベリアの監獄へ、さらに兵役へと送られ、自由の身になってからの私生活も波瀾万丈でした。激しい恋の狂奔、桁外れの賭博熱、繰返し襲ってくる精神疾患……。
小林氏はこの驚天動地の作家の肖像を小説のような具体的描写ではなく、批評独自の抽象的描写で描くという空前の表現法に挑み、その野心を堂々前人未到の評伝文学として結実させました。それが「ドストエフスキイの生活」です、氏が日本における近代批評の創始者と称されるに至った最初の足跡がこの作品です。完成した年、氏は37歳でした。
後に氏はドストエフスキイの代表作「罪と罰」を論じて、「これは犯罪小説でも心理小説でもない。如何に生くべきかを問うた或る『猛り狂った良心』の記録なのである」と書きます。「ドストエフスキイの生活」は、まさに氏によって書かれたドストエフスキイの「如何に生くべきかを問うた『猛り狂った良心』の記録」です。講義ではそこを読みました。
講師 池田雅延
*「ドストエフスキイの生活」は、新潮社刊『小林秀雄全作品』の第11集に入っています。
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