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2019年11月講義『平家物語』

  • manebiyalecoda
  • 2019年12月2日
  • 読了時間: 2分

更新日:2021年1月11日

 「平家物語」といえば、その語り出しが有名です、――祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらわす。おごれる者も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし……。この名調子が人々の心をとらえ、「平家物語」は平清盛を中心とする平家一門の栄華と滅亡を、仏教的無常観を主題として描いた軍記物語である、という読み方が世に定着していると言っても過言ではありません。

 しかし、小林氏は、そうは読みません。――「平家」のあの冒頭の今様(いまよう)風の哀調が、多くの人々を誤らせた、「平家」の作者の思想なり人生観なりが、そこにあると信じ込んだがためである……。そう言って氏は、「平家物語」の合戦場面でも好きな文の一つだという巻九の「宇治川先陣」を取上げ、具体的に、ヴィヴィッドに「平家」の読み方を示します、――まるで心理が写されているというより、隆々たる筋肉の動きが写されている様な感じがする。太陽の光と人間と馬の汗とが感じられる……、さらには、――込み上げて来るわだかまりのない哄笑(こうしょう)が激戦の合図だ。これが「平家」という大音楽の精髄である。「平家」の人々はよく笑い、よく泣く。僕等は、彼等自然児達の強靱な声帯を感ずる様に、彼等の涙がどんなに塩辛いかも理解する……。

 「平家物語」は、無情にも無常観という湿気た着物を着せられてきました。今回は、そういう暗い「平家物語」ではなく、作者たちが意図した豪快闊達、天真爛漫そのものの活劇「平家物語」を、朗々と明るい小林氏の語りでお聴きいただきます。

​ 講師 池田 雅延

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